Club-Z CR-8000ユーザー事例

Design Force ユーザ様訪問企画その1:株式会社キョウデン様


本年6月号の読者アンケートで多数いただいた、「図研製品のユーザ事例を紹介してほしい」というご要望を受け、基板設計CAD “CR-8000 Design Force”のユーザ様訪問を企画しました。
初回にご協力いただきましたのは、長野に本社を置き、プリント基板設計製造を中心に、筐体・メカ部品の設計・製造、最終製品の組立てまで幅広く事業展開されている、株式会社キョウデン様(以下、キョウデン様)です。

<注目はココ!>
 ● 基板設計のトレンド:車載関連で高速デジタル回路が増加
 ● オススメ機能は「DRCチェック」と「オフセットビア」
 ● 操作性アップ!自社環境に最適化したランチャーメニュー

キョウデン様では、PWS(※)、Board Designer、Design Forceと歴代の基板設計CADをご利用いただいており、今回は「Design Forceの取材であれば、一番の使い手を」とのご配慮から、名古屋にある設計開発部 中部設計センターの伊藤様と上司の山田様を訪ねることとなりました。Design Forceについて新機能の使い勝手やキョウデン様ならではの使い方など、詳しく聴いてきました!
 
(※)PWS・・・図研が1988年に提供を開始した基板設計システム

設計開発部 伊藤様(左)、山田様(右)

設計開発部 伊藤様(左)、山田様(右)  

 
 

キョウデン様のご紹介

「ワンストップソリューション」の基板製造メーカー

 

山田様:私たちキョウデンは、お客様の「アイディアをカタチに」をコンセプトに、製品の企画・設計・開発から一連の生産および調達まで「完全内製型ワンストップソリューション」を提供しています。創業時は、プリント基板の製造を行っていましたが、お客様からのご依頼を受けて、回路設計、基板設計、筐体設計と各種設計を行うようになり、そこからそれに関連する材料の調達、筐体の製造、組み立て、試作・評価までと、多様なお客様のニーズに対応していくことで、製造工程のすべてを自社内でできるようになりました。このワンストップの体制を整えていることが、当社の強みであると考えています。

 

現在のご利用のCADは?

 

伊藤様:当社では、基板設計で国内外ベンダー合わせて様々なCADを使用していますが、図研のDesign ForceがメインCADとなっています。 Design Forceは、2014年から使い始めて、現在4年目です。 図研のCADは、PWSから使用し始めて、前のBoard Designer、そしてDesign Force(以降DF)と移行してきました。図研のDFは直感で作業できるCADなので、他社CADからの移行の場合、習得はそれほど難しくはないようです。逆に前のBoard Designerからのほうが慣れるのに時間がかかっているようです。

 

図研CADを選ばれた理由は?

 

山田様:当社では、お客様の環境に合わせた設計をするスタイルをとっており、お客様のCAD環境に合わせたCADを持つようにしていますので、お客様環境で図研CADが増えた結果、当社でも図研CADがメインになっています。

伊藤様:設計者の視点で言いますと、海外ベンダーのCADに比べて図研CADは、お客様の要望に合わせて、円弧や渦巻きなどの細かい図面が描けるところが優れていると思います。海外ベンダーのCADであれば、他のCADで一旦図形を制作し、それを取り込む必要がありますが、図研CADはその手間なく、実現することができますね。

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最近のトレンドや案件の特色は?

 

伊藤様:中京地区の特色で、車載関連のお仕事が多いのですが、車載関連にも高速デジタル回路が増えてきており、配線手法もバス配線から、シリアルバスが求められるようになり、設計時にケアするところが変わってきていると感じています。

山田様:車載関係でもFPGAの使用頻度が多くなり、デジタル高密度で高速信号の設計依頼が増えています。FPGAに接続されるメモリとしてDDR3やDDR4が使われるようになり、そこで波形のズレが生じていないか、伝送線路のシミュレーションが必要になりますので、お客様からのご要望も変化しています。
センサー関連でも同様の変化が見られますね。

 

Design Force 2017 から 2018 にバージョンアップして良くなった点は?

右クリックのサブコマンドが結構使えます!

 

伊藤様:自動配線などの大きな機能追加をしていただいていますが、なかなかうまく使えていません。それよりも細かいところで操作性が上がっているので助かっています。

 
sendto_partselector
 

伊藤様:例えば、「部品セレクタへ送る」という機能があるのですが、一部の回路ブロックだけ指定すると必要な部品だけを指定できるので、有効に使わせていただいています。
それと一番良かったのが、「DRCのチェック」ですね。以前は、結果表示ですべてのエラーが表示されていましたが、「部品」「非導体」などの種別を選択して、必要のないエラーが非表示にできるようになり、助かっています。 
 他の設計者に聞いてみても、右クリックに「オフセットビア挿入」などの意外と使えるコマンドがあると言っています。

編集局:マニュアルに載っていても読まれていないケースが多いですよね。伊藤さんは、そのような機能をどのように発見されているのでしょうか。

伊藤様:社内の設計メンバーと話したり、ヘルプを見たり、設計作業中にこのコマンドはなんだろうと、偶然に発見することが多いですね。

 
 

他に Design Forceのオススメ機能はありますか?

「オフセットビア」で設計作業の下準備が楽になる

 

伊藤様:最近気づいたのが、「オフセットビア」という機能で、ある程度ブロックを設定しておくと、すべてにビアが打つことができ、階層を下げていくときに使っています。
これで、引き出しの検討はかなり楽になるのではないでしょうか。

 
demo_offsetVIA

※動画の撮影にあたり、Bandicam Companyの動画編集ソフト”Bandicam”を利用しています。

 

山田様:これも人が作業すると、BGAパッドに対して斜めに引き出したところ全てに同様にコピーしながら、手動でピンを打っていかないといけませんが、この機能を使うことで時間短縮することができます。地味な機能ですが、実際に設計していく上では、この引き出しを終えた時点からようやく設計作業を開始できるので、下準備のストレスな部分を解消してくれています。

 
 

自動配置は、使い方を編み出しました!

 

伊藤様:DF 2018から追加された機能で「自動配置」があるのですが、自動配置するためには部品をグループ化する必要があり、ひとつひとつ部品を選んで、グループ登録していかなければなりませんでした。これが非常に手間で自動配置が使えていませんでした。
そこで、まずは分割設計のように、回路ブロックに分けて切り取り、そこでグループ化すると必要な部品だけのグループになるので、それを戻してから自動配置をするという方法で、なんとか使えるようになりました。ひと手間プラスすることで、使えるようになり、今は基板の中に収まるかどうか、自動配置を用いた検証で活用しています。

 
autolayout_parts_group

編集局:御社で編み出していただいた手法なんですね。

伊藤様:今後の要望としては、グループ設定は、もう少し改善していただきたいですね。グループ設定をうまく駆使できれば、テンプレート配置もかなり精度が上がってくるのではないかと思います。DF 2018からシルクも取り込めるようになったので、流用度は上がったのですが、パート名が異なると流用度が下がるので、グループ設定ができれば、精度がよくなるのではないかと思います。

※DF2019では従来より簡単にグループ化できるように、部品グループ設定機能を改善予定です。

 
 

他に、御社ならではの使い方はありますか?

自社開発のランチャーメニューで、操作性アップ

 

伊藤様:設計の効率アップのために、自社でランチャーメニューを作っています。
設計でよく使用する、ツールのバージョンアップやバージョンダウンについて、以前はバッチコマンドでやっていましたが、画面を切り替えたりする作業が面倒なので、ドラッグしてバージョンアップ/ダウンの操作ができるように、社内でランチャーを作っています。図研で用意されているバッチコマンドを使い、そのUIを設計し自社開発しています。
これを制作する際には、使い勝手が良くなるように、縦長か横長か、画面サイズはどの程度が作業の邪魔にならないかなど、微調整しながら開発しました。

山田様:その他にも、このメニューを使うときのデータフォルダの位置など、社内で運用ルールも共通化できるようトータルで設計しています。

編集局:このようにバッチコマンドを駆使して、ランチャーメニューを作り、操作性アップに取り組まれている事例は、他社さんにとって参考になるでしょうね。それに、これだけ、使いこなしていただけているのは、当社としてもありがたい限りです。

 
 

<ランチャーメニュー>
ランチャーメニュー

 

海外ベンダーのCADと比較して、いかがでしょうか?

一番良いところは、サポート体制ですね。

 

伊藤様:操作に困ったときに、その場で解決したいと思いますし、困ったときに電話ですぐに訊けるというのは、何より有り難いですね。

山田様:お客様の納期を厳守するためにも、問題をリカバリして先に進めなければなりません。すぐに電話で問い合わせができ、設計データの該当箇所の状況を把握して、手厚くサポートしていただける体制があるのは、安心感がありますね。

編集局:そんな風に言っていただけると、サポートメンバーが喜びますね。

山田様:マイナス面を挙げると、海外ベンダーのCADは、ユーザ同士が情報交換できるフォーラムページがあり、好き勝手にWEB上で会話できるようになっていますが、図研さんにはそのようなWEB上の情報交換の場がないんですよね。近年、ユーザフォーラムを開催されるようになりましたが、WEB上でいつでも情報交換できるようになれば良いと、設計者は言っていますね。

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編集局:あとは、「ユーザさん同士で情報交換しておいて」といった、海外との文化の差もあるのかもしれませんね。

山田様:CADの操作に関する問い合わせを書き込むと、他のユーザさんが回答してくれるようなケースも結構あります。図研さんの場合は、図研のサポート(Zuken Global Support)で解決していただけるわけですが、問題解決方法としては、ネット上でユーザ同士が情報交換する形も有効だと思っています。

伊藤様:図研のサポートの方は、実際に設計作業をされているわけではないので、特殊な図形を描きたいけど、どういう風に描くのか、という点でのサポートは難しいところがあると思います。

山田様:最終的に作り上げるときの操作方法までのサポートは難しいと思いますので、WEB上のフォーラムのような形で他社のユーザに訊けるとありがたいですね。

編集局:ユーザの声として、検討の余地はありますね。

 
 

Design Forceに今後期待することはなんでしょうか?

過去の設計データの流用性を上げていただきたいです。

 

伊藤様:過去に設計を行い、動作評価が終わっているDC/DC周辺レイアウトやFPGAからメモリ間の配線を部品配置の段階から容易に流用できるといいなと考えています。
具体的には、過去の設計データと今回の設計データを1つのウィンドウで開き、流用したい部分を既存のテンプレート配置の機能のように配線・部品位置・シルク位置を流用できれば良いですね。評価が終わっている配線を流用できれば、お客様も評価の確認時間が削減できますし、ご安心いただけます。現状の環境でもやろうと思えばできるのですが、分割して持ってくる必要があり、手間がかかってしまいます。
また、できればシルクを座標入力で取り込めるようにできると良いですね。
PWSで設計された基板をDFでNDF運用に切り替えた場合、部品位置は座標入力で流用対応できるのですが、シルク作業はもう一度発生させ、配置を行う必要がある場合があります。

編集局:ありがとうございます。ご要望は開発担当へ展開させていただきます。他にご要望はございますか。

伊藤様:DRC、MRCエラーも含めて、エラー数が非常に多いので、もう少し減らせる方法をサポートしてくれるとありがたいですね。ひとつでも見逃してしまうと不良になってしまうので、すべて見ていくのですが。

編集局:そのようなニーズが多いですね。現在、社内でもAI技術を取り入れて、DRCエラーの擬似エラーを減らせる方法を検討していますが、100%エラーであるとしてふるい落とすのは難しいようです。

山田様:虚報がゼロにならなくても良いのです。確実に虚報だとわかるものを取り除いていただけると、それだけでも相当数が減るので、ゼロにならなくても良いので、改善して欲しいですね。

編集局:次のZIWのロードマップセッションでその検討状況について発表する予定です。図研としては、AIをそういった用途に使えないか検証しています。

※ DF 2019ではテンプレート配置機能を拡張し、別の設計データ内から配置と配線を流用する機能を追加予定です。

 

最後に、御社の目指す設計の方向性について、お聞かせ願えますか?

「設計技術力」と、「モノづくりのノウハウ」、この2つを併せ持つキョウデンの開発設計部隊として、総合提案力のNo.1を目指す!

 

山田様:当社の設計開発部では、回路設計、機構部品の設計、基板のアートワーク、解析・シミュレーション、最終評価の部隊と、この5本の柱を持っており、基板設計だけでなく、モノづくりのノウハウを盛り込んだ設計部隊でありたいと考えています。
アートワークに特化しているメーカーさんもおられますが、当社ではアートワーク部隊が回路のことを知っている、機構のことを知っているなど、互いに知識を補い合い、横連携することにより、「開発分野における総合提案力のNo.1になる」ことを目指しています。

編集局:なるほど、それが御社の強みでもありますよね。前後の工程を知っているだけで製品のクオリティも違ってきますからね。

山田様:先日もUSBのタイプCのコネクタの基板設計の案件があり、苦戦しましたが、製造部隊、実装部隊などから知識を持ったメンバーが集まり、対応することができました。
これは一例ですが、製造能力、製造機械の限界を把握した上で、どのような設計にするのか、そのままではできないのだから、どのように実現するのか、こういった検討ができるのが、キョウデンならではだと思っています。

 
気がつけば2時間、設計業務に掛ける想い、そして「Design Force愛」とも呼べるアツいお話を聴かせていただいていました。当社開発メンバーも「そうやって使ってもらってるんだ!」と唸った今回の取材内容、少なからず今後の製品開発にあたり活用させていただけるものと確信しています。上期末の大変お忙しいところご協力いただき、本当にありがとうございました。
 
読者の皆様、いかがでしたでしょうか? 「これはあるある!」「これはうちでも使えるぞ」といった共感や気づきなどになれば幸いです。
なお、Design Forceユーザ様訪問企画は2回目も準備中ですので、ぜひご期待ください。